OMOTEOコラム

ドキュメントノベル「俺の肌」vol.2

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「ふざけるな、そんなイベントに出てたまるか」
 
久しぶりに来た出演オファーにも関わらず、ベースの佐々木は強い調子で言った。
他のメンバーは一同にキョトンとし、「なんで?」の文字を顔に浮かべた。
 
佐々木はとあるロックンロールバンドのベーシストだ。
学生時代からかれこれ20年以上、ずっと同じメンバーで活動を続けている。
メンバーの腕前は確かなもので、地元ではそこそこ知名度もある。
とはいえ、実態はたんなるアマチュアバンドだ。それぞれ仕事の合間を縫ってスタジオで音合わせをし、
地元の小さなバーで定期的に演奏したり、たまに仲間内でイベントを催したり、
打ち上げの居酒屋で音楽論をぶち上げたりする、そんな星の数ほどあるアマチュアバンドのひとつだ。
 
だけど佐々木に言わせると、「俺らはロックンローラーである」ということだった。
ロックンローラーにアマチュアもプロフェッショナルも無い。
ロックとはある種の精神状態、自分の心の在り方、生き方なのだという信念を持っている。
アマチュアバンドという意識で音楽活動するなぞ、佐々木にとっては言語道断の行為なのだ。
 だからドラムの村上が持ってきたイベント出演オファーに、「ふざけるな」と答えたのだった。
 
 
「いやいや、なんでよ? 久しぶりに広いハコでやれるのよ? 出ようよコレ」
「そうだよサッさん。チャージバックもちゃんと貰えるらしいしさ、いいじゃないの」
「会社の若い連中とか呼んでさ、カッコイイとこ見せようじゃない」
 
口々にイベント出演を促すメンバーを苦々しげに見つめ、佐々木はもういちど言った。
「ふざけるなお前ら。イベントのタイトルをよく見ろ」
 
ドラムの村上が手にしているフライヤーには、
<第1回 目黒区おやじバンドコンテスト>という文字がデカデカと印刷されていた。
佐々木のロックンローラースピリットが、
「おやじバンド」という響きに猛烈な拒否反応を起こしたのだった。
おやじバンドとしてステージに立つなんて、お前たち正気か?
ロックンローラーとして恥ずかしくないのか?キースやミックに申し訳ないと思わないのか?
と、メンバーに激しく問うたのだった。
 
これが10年前ならば他のメンバーも佐々木のコトバに深く納得しただろうが、今回は違った。
ドラムの村上がスタジオの鏡を指差して言った。
 
「ほら…。どっからどう見てもおやじだよ、俺たち」
 
「小一時間リハしただけで、おでこがテカテカになってるじゃない(笑)。サッさんも」
と、ギターの板倉も追い打ちをかけてきた。
「な?だから出ようぜ。おやじ上等よ」と盛り上がるメンバーに、それでも佐々木は言った。
違うんだ、俺が言いたいのはそういうことじゃないんだ、と。
自分たちがビジュアル的におやじだということは俺も認める、でも想像してみてくれ。
<おやじバンドコンテスト>という名のイベントに、おやじ然として堂々とステージに立つ。
それってダサいと思わないか? みずから「ロックンローラー」の矜持を捨てて、
自分を「おやじ」にカテゴライズし直す行為に他ならないのではないか…?と。
 
あくまでイベント参加に反対する佐々木に対し、とうとうメンバーも業を煮やした。
「ならどうしろってんだよ!全員で整形手術でもして若返るか?」
「見てみろ、皆の顔のテカリ具合を! もう俺らはこの脂性と付き合い続けるしかねえんだよ!」
 
 
 
…その日は結局、イベントに出演するかどうかの結論は出なかった。
佐々木は「すこし考えさせてくれ」と言い残してメンバーと別れ、帰宅前に近所のバーへと立ち寄った。
こんな日には何杯かのバーボンが必要だった。杯を重ねながら思慮していたのは、
どう説明すればヤツらは納得するだろうか…ということ。自分の中にある
「おやじバンド」に対する拒否反応は、どうすれば打ち消せるのか…ということだった。
そして夜も深まったころ、そのバーで佐々木はある光景を目撃した。
 
 
安田という青年が、性格の悪い美女をみごとに打ち負かすシーンだった。
なんでも以前、その青年は美女から「あなたの肌はひどいわねぇ」などと罵詈雑言を浴びたそうだ。
非常に悔しい思いをしたらしいが、何も言い返さなかったそうだ。
そのかわり毎日スキンケアを施し、見違えるような肌を手に入れたのだという。
その肌を今日、性悪の美女に見せつけたのだ。こないだのセリフ、もういっぺん言ってみな、と。
美女は非常にバツの悪そうな顔をして、何も飲まずに帰っていった。
 
 
その光景を目撃した時、佐々木は「これだ」と思った。
そうだ、肌の状態で人の印象は大きく変わるのだ…。
俺たちが「おやじ」でなくなれば、全てはオーライじゃないか…と。
あの青年のように毎日スキンケアをして肌を改善すれば、
「おやじ」から「イカした大人の男」になれるはずだと佐々木は確信を持った。
 
<おやじバンドコンテスト>に、まったく「おやじ」を感じさせない大人の男たちが出演するのだ。
 
「うん、これはなかなかロックだぞ…」と佐々木は嬉しくなった。
「ロックンローラーは反抗精神を忘れちゃいけないもんな…」
「そうだよ、年齢に反抗して輝き続けるんだよ…」「男のスキンケアは、実はロックな行為なんだよ…」
と頭の中でひとりごちた。それから佐々木は、
 
「ねえキミ、そのスキンケアだけどさ、どんな製品つかったの? 4人分揃えたいんだけど」
 
と、青年に声をかけた。
 
 
 
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※このドキュメントノベルは実話に基づき構成したものですが、登場する人物・人名・団体・場所などはすべて架空のものです。

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