OMOTEOコラム

40オトコは、ココ・クレーターの風を聴け。

OMOTEO オモテオ

ハワイ、オアフ島。ワイキキ中心部から東へ11マイル。

観光客が押し寄せるハナウマ湾のすぐそばに、ココ・クレーターはある。

クレーターのふちが丘になっており、ひとつの山と呼んでもいいくらいの風貌をたたえている。

ただ、ここに吹く風が、40オトコを覚醒させることは、旅行案内には書かれていない。

 

オアフ島を東西に貫く大動脈、ハイウェイH1から、カラニアナオレ・ハイウェイに乗り、

高級住宅地ハワイカイに差し掛かる頃、ちょうど左手の先に、

ずんぐりした台形の山が見えてきた。あれが、ココ・クレーターか。

太陽はほぼ真上に上がっていた。

質量を感じる日差しが、肌にのしかかる。

ワイキキ市内で借りたレンタル自転車は、タイヤが極太で重く、

ブレーキもアルカトラズの監獄のドアのような不吉なきしみ音をたてる。

おまけに頑丈なU字ロックが、振動で暴れ、後部の荷台を五月蝿く叩く。

日本と違いハイウェイでも自転車が走れる。ただし、片側4車線の巨大な道路を走る自転車は

ほとんどいない。酔狂なジャパニーズだな、という目をしながら、ピックアップトラックの男が

こちらを振り向き、去っていく。

 

 

 

多くの観光客は、2ドル50セントを払い公共バスで来るか、

あるいはレンタカーか、ツアーでやってくるだろう。

わざわざ自転車で汗を吹き出しながら走ってきた理由は何だろう。

おそらく、自分のカラダと、この地球を「馴染ませ」たかったからだ。

 

最近、40歳をこえて、自分の肌感覚が鈍ってきたと感じていた。

スキンケアの話だけではなく、いわゆる「知覚」「勘」としての意味である。

思い過ごしかもしれないが、20代の頃は、

もっとダイレクトに、外界の出来事や自然の営み、他人の言動などに

接して反応し、感動や発奮や嫉妬をしていた気がする。

それがだんだんと、フィジカルに受ける刺激を避け、

ちょっとした伝聞や視覚だけで判断をし、「こなせる」ようになってきた。

皮膚は第三の脳だ、とも言われるが、

やはり肌で受け取る刺激や感覚は、生きる上で非常に重要なのだろう。

いま、感じ取り、物想うセンサーが、錆び付きだしていた。

フィジカルに、この世界とぶつかっていきたかった。

 

旧式重火器のような自転車を置き、ココ・クレーターの麓に立つ。

見上げて思わずつぶやいた。「おい、なんだこりゃ」

山頂まで、見事に一直線に線路が伸びている。しかも強烈な斜度である。

 

 

このトレイルの正式名称は、「ココ・クレーター レイルウェイ トレイル(Koko Crater Railway Trail)」。

第二次世界大戦時、アメリカ軍がこの丘の上に施設を作った。

そこへ物資を運搬するための線路(レイルウェイ)を敷設。いまでは施設は廃棄されているが、

線路と枕木は残っている。要はケーブルカーでなければ、お手上げのような坂を、歩いて登るわけだ。

 

なるべく上を見ぬよう、枕木を階段代わりにして、登って行く。

当然、枕木はレールのために敷いてある。人が階段として使うためではない。

屋久島・縄文杉への途上に、難所のトロッコ道があるが、同じである。歩幅が合わずに難儀する。

そこへ太陽の重みが加わる。引き返そうかと思う。何とかこえらえる。

500mlの水を持ってきたが、すぐに半分以上を飲み干す。水分は汗として蒸発する。

頻繁に銃声が響き渡る。麓にある射撃場だ。

日本では聞くことのないアサルトライフルの発砲音に、緊張が走る。

 

後半になるにつれ、斜度は劇的に急になる。

実際の見た目では、「壁」である。

上半身裸の屈強な外国人の男が、息を切らしながら、しゃがみこんでいる。

「What’ up?」と手を差し出してきたが、笑顔に力がない。

下を向き、右足を出して、休み、左足を出して、休み、

ゆっくり、一歩一歩、上へ、上へ、上へ。

ふと、枕木が消えた。

ここから、山肌を軽く登り、辺りが一気にひらける。

 

山頂である。標高、約370m。決して高くはない。しかし、数字以上の「高み」を感じる。

南を見渡すと、ハナウマ湾、ハワイカイの街並、

西の彼方にはダイヤモンドヘッド(標高約232m)が見える。

北へ目を向けると、コオラウの山々。

北東方向の大海原を、ボートが白波を立ててスゥーっと進んでいる。

 

そして、風が吹いている。透明感のある、涼やかな風が吹いている。

あれだけ酷暑だったことが幻想のように心地よい。

全身の肌が、地球に流れる「気」を取り込んでいるようだ。

肌が感じて、脳が動いている。錆び付いた「センサー」が再起動している。

思わず笑みがこぼれる。周りの人々も同じだ。

 

この頂のことを、ハワイ語で「Puu Mai」というらしい。

直訳すると「(こちらへ)やってくる丘」。何が「やってくる」のか?

本当の意味は違うのかもしれないが、自分の中に新しい「センス」が生まれ来るのではないか。

 

人生という冒険の半ばにいる男たちよ、肌感覚を蘇らせよ。

古臭い経験や思い込みではなく、自らの皮膚で感じるフレッシュでリアルな体験をせよ。

乾き固まった肌じゃ、人生は潤わない。ココ・クレーターの風が、そうささやいた。

 

さぁ、面を上げて、男はどこへゆく。

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